日経産業新聞の連載「VB経営AtoZ」代表岩佐による第8回を掲載しました

日経産業新聞の連載コーナー「VB経営AtoZ」で弊社代表取締役の岩佐による寄稿第8回を、日経産業新聞の許諾をいただき転載いたします。本連載は5週おきに掲載され、次回の紙面掲載は10月20日の予定です。

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日経産業新聞連載「VB経営AtoZ」


takuma国際展示会の効用
ネット民が世界に情報拡散

前回はニッチなネット・コミュニティが世界のさまざまな国に散らばるマニアたちをつないで大きなコミュニティとして機能するようになり、そこを狙って製品を投入するというスタイルについて説明しました。ネットとソーシャルメディアが生み出したあたらしい需要の形というわけです。

しかし、ネットのコミュニティは細かく分断されており、全てをメーカーである我々が日々チェックするというのは大変に困難です。またLINEやWeChatといったクローズドなコミュニケーションツールが爆発的に伸びている昨今、メーカーとしてユーザ候補者との(ネット上での)接触が難しいコミュニティーのほうが増えている印象を受けます。さらに多くのファンたちによるコミュニティーは、メーカーが商業色丸出しで乗り込んでくるのを嫌います。

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今年1月、米ラスベガスで開催された展示会「CES」のCerevoのブース

今年1月、米ラスベガスで開催された展示会「CES」のCerevoのブース

そこで重要になってくるのが「国際展示会への出展」です。海外で開かれている展示会でニッチな新商品を披露し、さまざまなニッチ・メディアが記事にすることで、結果多数のニッチ・コミュニティーに「記事で見たよ」と情報が伝播されてゆくのです。なんと前時代的な取り組みと侮るなかれ。こういった展示会はインターネット時代のいま、国際的なネット・コミュニティーにアプローチするもっとも楽な方法のひとつなのです。

ネット・コミュニティーの周辺には、ニッチなネット商業媒体が必ずあります。前回話題にした古い車をレストアする趣味人達のコミュニティーのまわりには、旧車のレストアに関連した情報を発信するウェブ媒体、そこまでとは行かなくともそういったジャンルの情報を専門的に扱うブログで生計を立てている人などが相当数いる時代になりました。メディアを持つことに初期コストがほぼかからないインターネット時代だからこそ、です。

そして、そういった方々は世界各国に存在していて、有名国際展示会が開催されるとなると、記事ネタを探して世界各国から繰り出してくるのです。家電業界最大の展示会であるCESは、そういったプレス登録者だけで6,000人を超えるというのだから驚きです。

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プレス参加者だけではありません、やはりそういったコミュニティには趣味が昂(こう)じて仕事にしてしまったような、同業他社の人もたくさんいらっしゃいます。そんな人達がブースに来て、写真を撮って、コミュニティに投稿してくれる。展示会というと地味なイメージかもしれませんが、実は裏のネット・コミュニティーとその周辺を取り巻く人々による大いなる広報合戦が繰り広げられているのです。

さて、情報は伝播した、と。とはいえ、ネット以前であれば「世界中さまざまな国に散らばる同好の士に(物理的な)製品を届ける」というのは難しいものでした。そこを解決に導いた、決済と物流のインターネット革命について、次回詳しくお話いたしましょう。

 

出典: 日経産業新聞 2016年9月1日掲載